株式会社ビーコンラーニングサービス

インタビュー医療・社会福祉法人

【インタビュー】社会福祉法人 阿部睦会様 

自律した職員の育成は法人の組織づくりから
社会福祉法人 阿部睦会 阿部 吉朗・常務理事





これまではトップダウン体制で法人が成長してきたと語る阿部常務理事。今後は「職員が自律して主体的に業務に取り組めるように育成を図りたい」と組織診断や研修を実施している。法人への想い、職員への想い、自身の果たす役割について、詳細をインタビューした。

ー法人の成り立ちを教えてください。
 大正末期に始まった横須賀隣人会という財団法人があったようです。そこに初代の会長が所属していて、当時は軍の関係の仕事をしていたようです。軍服などを作る仕事をしていて、裁縫をする作業所がありました。子どもたちも一緒にきて2階で保育を始めたことが始まりです。(現在の日の出町保育園)児童福祉から始まり、戦争で焼き出された高齢者のお世話をしないかという話で高齢者福祉も担うことになりました。

 私の祖父にあたる初代会長は社会福祉法人設立の5年後に亡くなり、その後は祖母が2代目会長となり70年近く第一線でやってきた。祖母から色々な話を聞く中で、当時の苦労話を聞いてきました。特別養護老人ホームもデイサービスも神奈川県下で一番最初に始めたんですね。かなりバイタリティがある方だったと思います。オープンマインドで時代のニーズをうまくキャッチしてきました。沿革を見ると分かるのですが、制度よりも先に取り組みを始めていることが多い。困っている人を目にして何とかしよう、と。


阿部睦会の歴史を当時の写真と共に紹介していただきました。

(阿部睦会の歴史を当時の写真と共に紹介していただきました)

ー共楽荘設立にはどのような想いがあったのでしょうか。
 当時は最低限の暮らしをお世話するという風潮にありながら、2代目会長は共楽荘に来た方に「心を豊かにしてもらいたい」と考えていたようです。心にゆとりができれば、隣の人と手をつないで色んなことができる。目に見える心の豊かさのほかに、食べる豊かさ、人の豊かさもある。別荘のように過ごしてもらいたい、と他とは一段違った場所を目指していくというのを当初から考えていたようです

 当時制度がない中で、どう暮らしを支えるのか、古い考え方ではなくていつまで経っても衰えない考え方だと思っているんですね。これは今の会長も自分自身も、長くいるスタッフもそういう気持ちで仕事をしているんじゃないかと、そういう風に思いますね。

新しく入ってきた職員に、これまでの使命や法人のミッションを伝えるのは、なかなか難しいことなんで。人財の定着率はそこまでよくないとは思うんだけど、それが正しいと思ってやり続けていくことが大切なんじゃないかと。そこに職員の考えも聞いて、受け入れて、一緒に成長していければいいんじゃないかと思っています。

ーむつみみらいプラン(中長期計画)について教えてください。
 令和2年度から11年度までの計画で、今折り返し地点に来ているんですが、人材を大切にするということを1番最初の項目にしています。その中で、今年は全職種で総労働時間を統一しようということをやった。

 職員に処遇改善するという姿勢を見せてから、それがやる気につながればと思っている。キャッチボールですよね。法人が先にボールを投げないと。ただ休みを増やしただけではなくて、ICT化を進めて間接業務を減らしているんですね。今までと同じやり方をしていては休みを増やせないけど、システム会社にも現場に即した仕様の変更やマニュアルの作成やなど協力してもらって、省力化できている。だから、研修の受講者が業務改善を課題に挙げていることが、嬉しいですね。

ーご自身が取り組まれていることについて教えてください。
 毎年10月に全職員にアンケートを取って回答をする。自由記述欄があって、去年まで読むのが怖かった。厳しいことを書かれる方もいますし。今年も見るまでは、そういうマインドだったけど、今年は特になし」も含めて165のご意見をいただいた。380人いる中で。半分くらい。あっ、こういうことを思っているんだったら、それをどうしたらいいかを考えればいいのか、という気持ち。法人としてのフィードバックをしようと思っている。

ー人財育成で一番大切だと思っていることを教えてください。
 職員の前で話す機会があるときは、「自律した職員になって欲しい」「考える職員になって欲しい」でもそれって、抽象的だから、どういうこと?と思っている職員もいるのでは。

 法人の基本理念の真ん中にある理念で「感性の錬磨」要は、自律した職員とは何かを自分で考える。何が今自分に求められているのか、自分で感じ取って、今自分がこうしたらいいんじゃないか、というのが理想像。法人としても発信してキャッチボールをしていくことをやっていきたい。

ー理想の人財を育てるために
 ステップを一緒に見つけていって一緒にやっていくこと。 特養で出した課題は「介護のやり方が違う」ということ。異動すると一から覚えている。だったら、どこに行っても同じ方法で介護をやりましょう、と。共楽荘は18の場面を整備した。今年の10月に完成したばかり。経験が長い方は「え、またこれ覚えるの?」となると思うけど、1年かけてマニュアルを作ったので、それが実際に運用できているかを見ないといけない。それをやらないとキャッチボールのボールがどこかにいっちゃうから。
 来年は何やろうかと自分は考えている。職員から、これやりたいと出てきたら、それをやろうと。でも、皆さん「言ったら自分がやらなくちゃいけないんじゃないか」と思ってしまう。私はまだ40歳手前なので、作るのは皆さんで、それをチェックするのは自分がやります、と一緒にやっていく。一つ完成できれば、「お、できたじゃん」と。これを毎年積み重ねていこうと。見直すこといっぱいあるんだよね。

印刷用は下記よりダウンロードできます。