【福祉トピック】(第5回)採用の方向性を明確にするには?
福祉業界において職員を採用する際に最も大切なのは、採用前に組織の基盤を整えることです。
「人が足りないから採用する」という考えでは、理念とのミスマッチや早期離職のリスクが高まります。
採用の成功と職員の定着には、人材像の明確化が重要です。
福祉業界は法律や制度の枠組みの中で運営されているので、どうしても「求める人材像」に共通性が
出やすいと言えます。
例えば、
・利用者に寄り添う姿勢
・協調性・チームワーク
・専門職としての倫理観
・地域との関わりを大事にする意識
といった要素は、多くの組織で共通して求められる資質です。
しかし、一方で、理念は組織ごとに「存在意義」「目指す社会像」「大事にする価値観」が異なるため、
そこからにじみ出る人材像には確かな個別性があります。
「一人ひとりの尊厳を大切にする」
→ 利用者の自己決定を尊重し、その人らしさを引き出せる人材
「地域とともに歩む」
→ 地域住民や他機関と積極的に連携できる人材
「安心・安全を守る」
→ 誠実で責任感が強く、リスク管理に長けた人材
「人材を育て社会に貢献する」
→ 学び続け、他者の成長を支援できる人材
理念の違いによって、求められる人材像にも独自の「色」が出てきます。
つまり、ベースとなる人材像は似ているけれど、理念を通して「どんな強みを発揮してほしいか」で
差異化される、といえます。また、理念のタイプにもいくつかの傾向があります。
1、利用者中心・自己実現型 → 利用者の希望や夢を尊重し、生活の主体性を支援する。
2、地域共生・共助型 → 地域と協働し、支え合う社会を実現する。
3、安心・安全・生活基盤型 → 安心できる場を提供し、安定した暮らしを守る。
4、人材育成・社会貢献型 → 福祉を担う人材を育成し、社会全体に貢献する。
5、宗教・思想に基づく型 → 仏教・キリスト教などの精神を背景にした理念。
このように、理事長や代表者の数だけ思いの色があります。
福祉業界の人材像は「共通するベース」と「理念に基づく独自性」
の二層で成り立っています。採用や人材育成の場面で、この点を意識することは非常に有効です。
組織の理念をただ掲げるだけではなく、「その理念を実現するために、私たちはどんな人に来てほしいのか」を具体的に言語化することで、他組織との差別化が生まれます。
さらに、その人材像を日々の行動や判断基準として具体的に示すことが重要です。
例えば『尊厳を大切にする』という理念であれば、“利用者の選択をまず確認する”といった行動に落とし込む
ことで、職員は理念を実感をもって体現できます。
そしてそれは、求職者にとっても「この法人で働くことの意味」を理解する大切な手がかりになるのです。
社会福祉の現場は、多様な人材が活躍するからこそ豊かになります。共通する資質を大切にしながらも、
自法人の理念を通して独自の人材像を明確に描くこと
――それこそが、これからの組織経営に求められる姿勢ではないでしょうか。
同時に、理念に基づいて10年後にどんな職員へ育ってほしいのかという将来像を示すことも有効です。
未来の姿を共有することで、職員は『今の自分の成長がどこにつながっているのか』をイメージでき、
キャリア形成の道筋が見えやすくなります。
理念に基づく人材像は、キャリア形成とも深く関わっています。
次回は、入職後にどのように成長へつなげていくか
――キャリアパスの仕組みを活用した職員の成長と定着についてお伝えします。
~現場のマネジメント、できていますか?BLSがお手伝いします~
【福祉組織対象】 11月13日(木)実施 福祉現場マネジメント基礎講座
この連載では、6回にわたって、現場から聞こえてきた声と、それに応えようとする工夫や取り組みを紹介していきます。
「自分たちならどうするか」を考えるヒントとして、ぜひご覧ください。
次回更新予定 10月21日
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