【福祉トピック】(第1回)笑顔を失う悪循環になっていませんか?
■ 笑顔を失う悪循環になっていませんか?
朝のミーティングルームに集まった職員たち。
その場にいた若手リーダーのXさんは、ふとあることに気がついた。
「最近、みんな笑わなくなってきている気がする——」
現場の活性化を願い、前向きな言葉を意識してきたXさんだったが、職員同士の会話には疲れがにじみ、
張り詰めた空気が漂っていた。雰囲気の変化を気にかけた彼女は、同僚一人ひとりの声に耳を傾け始めた。
すると、「人が足りない」「業務が多すぎる」「相談できる人がいない」といった声が少しずつ漏れ出してきた。
これはXさんの施設に限られた問題ではありません。
介護・保育・障がい福祉といった“ケアの現場”に共通する、笑顔を失わせる深刻な構造的問題がそこにはあるのです。
■ 笑顔を奪う“悪循環”の連鎖
介護・保育・障がい福祉の職場では、慢性的な人手不足と高い離職率が長年の課題とされてきました。それ自体は珍しい指摘ではないのです、ここで見落としてはならないのは、職員の「笑顔が消えていく」現象が、ただの疲労やストレスではなく、明確な構造的背景を持っているということです。
それは、次のような一連の流れとして表面化します(下図参照)。

これは、いわば“笑顔を失う悪循環”とも呼べる負のスパイラルです。
採用段階からすでに問題は始まっています。多くの法人では、求める人材像や採用基準が不明確で、採用活動そのものが形骸化してしまっています。法人の特性に合わない人材が入ることで、短期離職につながり、さらに人員不足が進行していきます。そして採用の質と数が確保できなければ、当然、現場の負担は大きくなっていくのです。
業務の偏りや長時間労働は、心身の疲弊だけでなく、チームワークや信頼関係の崩壊にもつながります。
本来は支え合うべき職場が「余裕のない職場」へと変化し、自然と笑顔が消えていくのです。
■ 深まる“対話の欠如”と“心理的安全性”の低下
職員の表情から笑顔が消える背景には、コミュニケーションの断絶というもう一つの側面もあります。
忙しさのあまり、業務以外の会話は後回しになり、相談・確認の機会は削られていきます。次第に誤解やすれ違いが起きやすくなり、「伝えたつもり」「聞いていない」「言った・言わない」など報連相が滞るようになるのです。すると、ミスや責任の所在をめぐる不信感が生まれ、「言わない方がラク」「黙っていた方が無難」という空気が蔓延していくようになります。
このような職場では、心理的安全性が著しく低下していると言えます。
意見や提案を口にすることがリスクとなり、本音を引き出す場が消えていくのです。職員同士の信頼関係は薄れ、業務効率は落ち、さらに心身がすり減る——悪循環のループがここにも現れてきます。
多様な職員が集まる福祉現場では、本来、多様な価値観が力になるはずです。しかし、そうした多様性を活かすどころか、「違いが受け入れられない場」に変質してしまうと、孤立感が進み、離職へとつながっていくのです。
■ 影響は現場だけでなく、ご利用者様や地域社会へ
職員が疲弊し、笑顔を失うと、最も直接的に影響を受けるのはご利用者様・園児の皆様とそのご家族様です。
ケアや支援の質は確実に低下し、「丁寧さ」や「思いやり」の一歩手前で止まる対応が増えていきます。これは言葉や態度の端々に表れ、信頼や満足度の低下を招き、地域での評判にも影を落とします。
そして皮肉なことに、この評価の悪化が新たな人材の応募を遠ざけ、採用難をさらに深刻化させます。こうして笑顔の減少が、組織の健全性そのものを損なっていくことになります。
■ 「笑顔」は職場の“バロメーター”
笑顔は、単なる表情ではありません。
それは信頼・安心・余裕・つながりの象徴であり、【職場の健全性を測る“バロメーター”】でもあるのです。
笑顔が見られなくなったとき、そこではすでに「声が届かない」「気持ちが通じない」「つながれない」という
サインが点灯しているのかもしれません。
冒頭のXさんのように、その変化に気づくことができるかどうか。
その「気づき」は、もしかするとこの悪循環を断ち切る第一歩となるかもしれません。
■ 私たちが大切にしていること
現場で起きていることを、「その人の性格」や「やる気」だけで判断してしまうと、見誤ることがあります。
私たちは、そこにある“関係性”や“空気”にも目を向けることで、組織の力を底上げできると信じています。
この連載では、6回にわたって、現場から聞こえてきた声と、それに応えようとする工夫や取り組みを紹介していきます。
「自分たちならどうするか」を考えるヒントとして、ぜひご覧ください。
次回更新予定 8月26日
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